施設長ブログ

福井ARC施設長が思ったこと、感じたことなど自由に綴っています

不可解

AAのハンドブックには 

アルコール依存症者にとって アルコール は

  巧妙で不可解で強力  なものと記されています。

このなかで 一般の人からみても、不可解と感じられることは多いと思います。

 たとえば

あるARC通所者は、全く同じような事件をこの10カ月の間に、3回犯しました。

そう、彼はこの短い期間に 無銭飲食で 今回 3度目の逮捕となりました。

ARCに通っている人が何か問題を起こし捕まった時に、施設長としての私が

警察署に呼ばれることがあります。

私の目の前で、私に事情聴取している警官には、彼の行動は理解できません。

2度目に逮捕された時の経過をよく知っている警察官だからです。

警察官には、彼の過去の行動はこのように映ります。

 

 とんでもないことをしでかしてしまった。

 暴言をはいて、店の人にも周りの人にも迷惑をかけた。

 もう2~3日待てば、お金が手に入ることは分かっていた。

 でも 飲むのを2日間は待てなかった。

 拘留されて自由を奪われているのは辛い。

 そのなかで 仲間が面会に来てくれてありがたい。

 でも その仲間を裏切ったようで、合わす顔がない。

 前回の裁判では情状証人に立ってもらって、奇跡的に執行猶予がいただけた。

 感謝している、今度こそ、今度こそ反省している。

 さあ また無銭飲食しましょう。

 

 彼の行動はこのようである、としか思えないからです。

なぜこうなるのか  警官には 不可解なのです

それが 〔アルコール依存症〕 なのですよ と説明しても理解できない。

  依存症:巧妙で不可解で強力なもの   

 

彼は何回も同じ過ちをしてしまった。

とても悪い事だと思います。

でも、今一度考えてはいただけませんでしょうか。

お金が無くて、お腹が空いて、お腹が空いているからこそ余計に

酒が飲みたいスイッチが入り、その欲求が依存症者である彼の行動を支配した。

このことで牢屋に入らなければならないのは、なんとも可哀想な気がします。

今までよりも厳しい治療のプログラムを与えたとしても

今一度、彼に

牢屋ではなく、依存症からの回復のチャンスを与えていただけないでしょうか。